blog庄司園長の部屋

共感する力

杉原保史さんが書かれた「プロカウンセラーの共感の技術」なる本を最近は、読んでいます。愛泉会の利用者支援の基本理念にも「受容と共感」がうたわれていますが、「共感」は対人援助サービスの基本です。

この仕事について28年、様々な方々と一緒に仕事をさせていただいておりますが、支援の様子を見ていて「センスがあるな」と思える人は、「共感する力」が高い人たちです。この本によれば、共感する力は、生まれつき備わっているものではなく、後天的に見につけていくものだそうです。私たちが、「共感する力」が高いなと感じられる人は、親、家族との関係が良好だった人たちなのだそうです。そして、対象者によっては、「共感する力」が高い人が、全く共感できず、「共感する力」が弱いと感じられる人が、共感できるなどという場合もあり、それは、その人に対する興味の問題なのだそうです。上手く表現できないので、詳しくは本を読んでください。ここで申し上げたいのは、共感力が強い人、弱い人にも、作為的に興味がわくように仕掛ければ、共感できるようになるのではないか、ということです。基本理念である「共感」を徹底するためには、仕掛けをすればいいのか……。

さて、2週に1度のペースでブログを書いているのに続けて書いているのは、うれしいことがあったからです。それは、いつもの「業務日誌」です。

「支援員として、一皮剥けた」と感じられる内容に喜びを隠せません。グループホームでの「語る会」の取り組みです。昨年開設したばかりのホームですが、入居する方々の想いを大切にした取り組みを行っていきたいと考え、Tリーダーは、PCPの手法を取り入れながら、入居者の視点で考えること、入居者の想いを引き出していくこと、そして引き出した声や要望を必ず実現させていくことを大切にし、取り組みを行ってきました。そして、この春、「語る会」で要望があった馬見ヶ崎川河川敷での花見を行ったそうです。高齢の方、障がいの重い方が生活するホームなので移動も大変だったようですが、業務日誌には、苦労を伺わせる記載は一切ありません。障がいの重い入居者の速度に合わせ、一緒に歩いたり、荷物を持って手伝ってくれたりする入居者の「心の優しさ」に感激したり、入居者がどんな風景に関心を持つのか、入居者の視点に立ち一生懸命見ようと努力する姿勢が伺われます。

また、入所支援のMリーダーは、Aさんと食事に出かけた時の様子を書いてくれていました。Aさんは、障がいが重く、全面的な支援が必要な方です。常日頃、あまり私たちの声掛けや誘導に応じてくれることはありません。その日は、Aさんの誕生日のお祝いで山辺町の食堂まで園の車を使い外出したようです。食事を済ませ、店を出た時、路線バスがたまたま通り掛かったのを見て、Aさんは、「バス」と言ったそうです。常日頃、あまり外出にも連れて行けず、好きなバスにも乗せてあげられず申し訳ないと感じたMリーダーは、「今がチャンス」とばかりに、一緒に行った職員に園の車を任せ、Aさんと一緒にバスに乗り込んだそうです。山形市役所までの短い旅。それでもAさんは、満足だったようです。上手く言葉で表現できない方たちの意思決定支援には、臨機応変さが大切なんだなと、Mリーダーの記載を見て感じました。

今年度、愛泉会の事業所として最も大切にしたいのは、「利用者中心の実践」です。それには、利用する方々1人ひとりの想いや願いを汲み取ろうとする姿勢、共感する力が欠かせません。スタッフみんなの共感する力を養っていくこと、高めていくことも私の仕事です。