blog庄司園長の部屋

熱帯夜の寝苦しい夜に

若い職員を対象に法人独自で「強度行動障がい支援者基礎研修」を行っていますが、今週は、「行動の背景と捉え方」をテーマに、自閉症の人に良く見られる感覚過敏や氷山モデルの考え方について、演習などを行いながら1時間ほどの勉強会を行いました。今週の講師は、村井センター長と僭越ながらも私です。

現場から離れ、自閉症についての学習も疎かになっているため、本を新たに購入し、勉強をし直しての登板ですが、最近は、課題解決、問題解決にばかり囚われ、自分でも何屋なのか解らないほど、すれて来たなと感じるような有様です。そんな時、大先輩のSさんから、「この仕事は、問題をなくすというマイナス思考の仕事ではないのではないか。共に暮らし、活動をするという相互交流の中で、何かが生まれてくる、そんなプラス思考の仕事ではないか」というご意見をいただきました。氷山モデルなどを語りながらも、問題や課題にばかり目がいき、消去法的な考えになっていたかな……。感覚過敏の話もそうです。皆に理解してもらいたいのは、生きづらさや痛みです。共感が伴わなければ、知識の押し売りです。

最近、バックに入れて持ち歩いているのは、テンプル・グランディンさんの「自閉症感覚」(NHK出版、2014年)です。グランディンさんは、「大きな騒音を聞くと、耳が痛くなります。それも、歯医者のドリルが神経に当たったような痛さ……」だそうです。ある人は、「シャワーの水が、針で刺されたように痛い」そうです。「ご飯を噛むと、砂を噛んだように感じる」人もいるそうです。また、「人の顔が、ピカソが描いた二次元のモザイクのように見える」人もいるそうです。視覚、聴覚、嗅覚、触角、痛覚……、様々な感覚が、大脳でうまく処理できないために、過敏または鈍感になってしまうようです。

シャワーの流水が針で刺されたように痛いのに、不潔だからと言って、シャワーを浴びるように強要されたら……。ご飯の噛みごたえが、砂を噛んだように感じるのに、偏食はいけないと強要されたら……。そんな状況でも、「嫌」と表現できなかったら……。そんな生きづらさを抱えて生活されているのです。そして、行動は、そうした生きづらさを訴えるための一つの手段です。

私たちの仕事は、そうした生きづらさを一つひとつ和らげていくことです。熱帯夜の寝苦しい夜に、クーラーを消して、彼らの生きづらさを……。もっともっと辛い痛みか……。

併設型の短期入所は制度として限界に来ているのでは?

「重度障害者支援加算Ⅱ」について、ブログを書いたら、様々な施設の方から、問い合わせの電話をいただきました。私がおこたえできるのは、ブログに書いてあることぐらいで、「詳しいことは、日本知的障がい者福祉協会のホームページを見てください」とおこたえするのが関の山ですが、どの施設も行政機関に問い合わせても、明確な回答が得られないということで、藁をもつかむ思いで電話をかけてこられたようです。

入所支援を行う施設は、確実に障がいの重い方々の生活の場になりつつあります。向陽園は、平成19年10月に新事業体系に移行したのですが、平均障がい支援区分は、平成19年度4.3、昨年度が4.8と0.5ポイント高くなっています。障がい支援区分が低くとも社会生活を送る上で課題があって入所される方もいらっしゃるので、支援区分だけで推し量ることはできないのですが、先の加算の対象となる行動援護点が高い方々は、全利用者の50%を超える数となっています。地域生活への移行がどんどん推し進められ、施設が障がいの重い方々の生活の場(障がいが重いから地域で生活できないわけではありませんが……)になることは決して悪いことではありませんが、制度がそれに伴って変わっていないのは問題です。

向陽園では平成6年から併設型の短期入所を行ってきましたが、短期入所の受け入れをどのように行っていくかが大きな課題になっています。先日、新庄養護学校の見学会に参加させていただきましたが、東南村山圏域の在校生は、小学部は、0人でした。親元から学校に通えるようにと、村山特別支援学校を各地に作っています。親の愛情が必要な児童期に親と一緒に過ごせることは、ご本人にとって大変望ましいことですが、親御さんの負担は大きいものと思います。レスパイトとしての短期入所は大変重要ですが、入所施設は、入所する方々の生活を支えるので目一杯です。介護施設で働いた経験がある職員からは、「介護施設では、短期入所専門の職員が何人もいて、短期入所を利用する方々の支援は、短期入所の職員が行っている。入所支援の職員が片手間のように短期入所の支援を行うなんておかしい」との声が聴かれます。もっともな話です。障がい福祉サービスの短期入所は、単独型にしろ併設型にしろ、別の事業に配属された職員が兼務で行っています。そろそろ職員が兼務で行う短期入所は終わりにしなければなりません。

6月末より、若い職員を対象にした「強度行動障がい支援者基礎研修」を法人研修として開催しました。6回コースで毎週行う予定です。力によらない、適切な支援を行うために、仕事終わりにもうひと頑張りしてもらいながらの講義です。ソフト面での充実とともに、制度やハード面での充実が絶対に必要です。