blog庄司園長の部屋

上半期を終了して

台風19号による被害が心配されましたが、何事もなく通過してくれたようです。4年前の水害の際には、皆様に様々な形で支援していただきましたが、その時に「50年に一度」と言われた豪雨が、最近は毎年のように見られます。今年も7月に向陽園がある本沢地区に大雨による避難勧告が出されました。台風や大雨注意報が出るたびにドキドキです。

さて、26年度も上半期が終了し、振り返りを行っているところです。サービス管理責任者、リーダーから報告書を作成してもらい、やり取りをしているところですが、再度見直しをしてもらうものが多くなってしまいます。職員は皆良くやってくれていると思ってはいますが、ついつい求めるレベルも高くなってしまいます。向陽園の事務長をされていた菊池勲先生が、20年ほど前の機関誌に、「福祉は、今日の時点がゼロだ。今日頑張ってレベルを1つ上げたとしても、明日になればゼロからのスタートだ。これで良いということはない……」と言ったことを書かれておられました。支援する側の慢心は禁物です。

今年度は、「現場にできるだけ権限を持たせ、現場レベルで判断し、事業を進めてもらいたい」「現場レベルで責任を持ち事業を行いながら、実力をつけていってもらいたい」との思いから、組織体制をフラットにし、サービス管理責任者、リーダーが中心となり、事業を進めていくような体制にしております。それだけに、サービス管理責任者、リーダーの役割は重大です。マネジメント力、リーダーシップ力、現場力……、様々な力が試されてきます。

また、自分の事業を良く見せようとすると、どうしてもいつもとは違った取り組みをしたことやイベントを書きたくなるものですが、支援現場で大切なことは、日常の生活の中に変化を見出すことだと思います。周りの環境のちょっとした変化、職員の何気ない対応にも利用する方々の行動は変わるものです。現場を離れているためかもしれませんが、利用する方々の表情や行動は日々変化しているように感じられます。福祉職場の人材不足が叫ばれていますが、ルーティーンワークを重視するあまり、そうした変化を感じる醍醐味を忘れてしまったためではないでしょうか。

上半期の報告書を見ながら、そんな事柄を上手く伝えられなかった自分自身を反省しています。

「小善は大悪に似たり」

怒ることだけではなく、若い職員の将来を見据えて働きかけていくことが私自身の大きな課題です。

本屋で考えたこと

今年から母校の同窓会山形支部の役員に加えていただくことになり、先日1回目の会合に参加させていただきました。70代から30代まで幅広い年齢構成で、職業も、社会福祉協議会で働く方もいらっしゃれば、病院のケースワーカーや養護学校の教員、家庭裁判所の調査官をされていた方など、様々で、「福祉」の多様性、幅広さを改めて感じました。そういえば、とある大学の試験を受けた時、環境権に関する論文が出て、論文が英文だったことと「なぜ福祉に環境権が関係あるんだ」と疑問符で全く答えられなかったことがありました。福祉の奥深さです。

さて、その会合の前に時間があったので、七日町にある大きな本屋さんをのぞいたのですが、「福祉コーナーに、福祉の本がない……」、置いてあるのは、「介護ビジネス」と資格取得のためのテキストだけです。ここの本屋さんに来れば、福祉関係の書籍があると思っていただけに、ショックでした。福祉が、「介護ビジネス」と資格を取ることだけの仕事になったら、働きたいなんて思う人間なんていませんよね。

今年の大河ドラマは「軍師官兵衛」ですが、最近の福祉の動向を見ていると罠にはめられているような感じです。「福祉は、経営の時代」と言われ、一生懸命経営しようと努力すると「社会福祉法人も課税」だとか(貯めすぎはいけませんけど)、最近は、「介護保険優先」と言って65歳以上になると、障がいをお持ちの方々も介護保険のサービスに切り替えようという動きも強く見受けられているようです。障がい福祉と介護保険を統合できなかった腹いせに「応能負担」の対象を少なくして、できるだけ「応益負担」の人を多くしようとしているのでしょうか。

先日の朝日新聞にイチロー選手のこんな言葉が載っていました。「結果も大事だけど、プロセスも大事。プロセスは、人間を成長させる」福祉も同じだと思います。「結果も大事だけども、利用する方々をどのように理解し、支援しようとしたか、そのプロセスが大事です。そしてそのプロセスが支援者を成長させます。その成長が支援者の自己実現ではないでしょうか。」
わたしたちは、その自己実現のために福祉を学び、この世界に入ってきました。若い人たちにも「ビジネス」ではなく、そんな「プロセス」を大切にして働き続けられる職場にしたいものです。