blog庄司園長の部屋

自己理解と他者理解

年を取ったせいでしょうか、最近は、高校生の頃に聞いていたニューミュージックのCDを購入しては、昔を懐かしんだりしています。少し前は、アリスを、そして最近は、出退勤時にさだまさしのCDを聞いています。ある裁判で、罪を犯したことを反省しない被告に対し、裁判官が、さだまさしの「償い」を聞いてみろと言い、判決を言い渡したのは有名な話ですが、道を見失いかけている若い職員、自信を失いかけている若い職員に私が勧めるとしたら、さだまさしの「風に立つライオン」です(何のこっちゃ)。

さて、先日行われた県協会主催の施設長研修会に北摂杉の子会の松上先生が講師としておいでになり、講演の中で、福祉の仕事を担う職員に大切なのは、「自己理解と他者理解」とおっしゃっていました。「他者理解」については、当然ですが、この仕事は、人間を相手にする仕事であり、福祉は、社会や人との関係の中で「生きづらさ」を抱え困っている方々です。昔々の話になりますが、「友愛訪問」というものがありました。金持ちの奥様達が、貧困で困っている家庭を一軒一軒回り、「貧乏なのは、あなたが怠惰で、働かないから悪いんだ。働きなさい。」と言って歩いたそうです。果たして、貧困は個人の資質に問題があるからなのだろうか……。そこから理論化、体系化されていったのが、「ソーシャルケースワーク」です。社会と個人との関係を見て、考察していく(診断)……、貧困は、決して個人に問題があるからではありません。同じように、私たちが日々接している知的障がい、自閉症と言われる方々も、上手く言葉で我々に伝えることができないために、時に行動で何かを訴えることがあります。その行動の意味を知るためには、知的障がいのこと、自閉症のことを理解しなければなりません。この世界でお金をもらって生きていくならば、その対象とする方々を理解していくのは、当然ですよね。

そして、「自己理解」です。我々は、機械や物を使って仕事をしているわけではなく、自分自身を使って仕事をしています。なので自分自身がどのような人間なのか理解しておくことが必要です。福祉の世界では、「自己覚知」などという用語を使いますが、尾崎新先生は、「自己活用」という考え方を使っています。「専門家としての自分や自分の個性を援助関係のなかで生かすために、援助者は自分を多面的に理解する必要がある」のだと……。「自己覚知」というと求道者的なイメージですが、「自分を生かすために理解する」と言われると、入りやすいですよね。私自身、様々な方々と接していて、マイナスの感情が無意識に引き出されることがあります。支援の中で、好き嫌いで対応を変えたり、無意識の内にマイナスな感情が引き出されるのは、専門家としてやってはいけないことですが、だから押さえろと言われても、大変ですよね。この仕事は、「感情労働」と言われていますが、自分で抑圧した感情は、どこかで吐き出さなければなりません。カウンセリングや上司や仲間の活用が必要になるでしょうか。チームワークの良い事業所は、やはり良い支援をしています。

もうすぐ新しい年を迎えますが、新しい年の目標を決める際の枠組みとして、「他者理解」と「自己理解」、2つの枠組みで考えて見てはいかがでしょうか。

今回は、若い職員へのメッセージとして書いてみました。昔々のことになりますが、海外青年協力隊への想いを母親に話した時、日本の中にも生き辛さを抱え、困っている人たちはいるんだと言われたことがありました。3K職場と言われ、大変な仕事かも知れませんが、福祉の専門家を目指し、「風に立つライオン」のように凛としていましょう。自分自身に向けたメッセージかもしれませんが……。