8月1日~12日に山形県郷土館文翔館において「やまがたでつながるボーダレスアート2019」として開催しました、やまがた障がい者芸術作品公募展では、180点の作品を御応募いただきました。その中から、山形県知事賞1点、きざしとまなざし賞1点、審査員賞3点、入賞23点が選出されました。おめでとうございます。
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山形県知事賞
「夕やけ 」 WAKAMIYA ALG
山形県知事賞は、風土や歴史、地域を感じる、幅広く県民に愛されるような表現を基準に選ばれました。
応募者のまなざし・コメント : 若宮病院(精神科)のアルコール依存症治療グループ。
リハビリテーションプログラムとして、週2回の活動で制作したもので、元入院患者の渡邉幸二さんが下絵や、着色を担当しています。山形市内からみた夕やけと、稲ぐいを描きました。模造紙を巻いてピースをつくり、張り付けていて、約10万個使用しています。10ヵ月の制作時間で、約20名で制作しています。(入院、通院、リカバリー者など)。
審査員のまなざし・コメント : 複数の人たちが関わりあいながら、話しながら、ゆっくりとつくりあげた山形の風景。そのどれもがうつくしく、不思議と、私やあなたがいつか見た懐かしい風景のようにも思えてくる。参加者のひとりである渡辺さんが、自身の記憶の中の風景を原画に起こし、材料である紙の棒を染める作業までされているとのこと。複数の人が大きな画面に向かって、やわらかな色に染まった棒を一本一本貼り付けていく時、きっと、一人一人の中に、それぞれの懐かしい山形の風景が立ち上がっているのだろうと想像した。 (瀬尾 夏美)
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「きざしとまなざし賞」
「無題」 柏倉 佑哉
「きざしとまなざし賞」「審査員賞」「入賞」は、表現の「きざし」と、その表現に寄りそう「まなざし」を感じるものや、表現の可能性を感じる表現を基準に選ばれました。
応募者のまなざし・コメント : いたずらの様子で、人が通るところに物を並べ、通る人とのやりとりを楽しまれる(?)ことがありました。その辺りにあるものを、そろえたり、つみあげて、通りにくくなるため、じゃまだなとも思いましたが、毎日色々で、なかなかおもしろい並べ方、風景だったので写真にとってみました。重たいものも持ってきたり、パワーがすごいです!
審査員のまなざし・コメント : 現場でいたずらはつきもの。問題行動として辞めるように強制することもある中、その行動を受け入れたことで作者の視点に立つ「まなざし」と、どんどん作風が変貌し面白さが増す作者の「きざし」。渾身のコラボ作品!(ライラ・カセム)
柏倉さんは、日々色んなものを並べる。それを見た人は、「さて、私は何をしよう」「置いた人は私に何をしてほしいんだろう」と考えて、色んなことを想像してしまう。日常にふっと現れた問いかけは、その人の1日を豊かにしてくれる。(瀬尾 夏美)
「作品」「表現」?と呼んで良いのかすらわからないこの「きざし」をすくい上げた「まなざし」に賛辞を惜しみません。この一見するとよくわからない行動に「表現」という視座を与えた途端に、さまざまな事物が立ち現われてきます。( halkenLLP)
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審査員 瀬尾夏美賞
「無題」 菅原 慶治
応募者のまなざし・コメント : 菅原慶治さんは、普段はグループホームで生活し、休日に趣味の絵を書いています。好きな絵は、時計、カレンダー、リモコン、人物画など。
独自の世界観でさまざまな配色のきれいな絵を書いています。色々なコンクールに応募し、展示されている自分の絵を観にいくのが楽しみの一つです。
審査員のまなざし・コメント : 菅原さんの絵を見ていると、絵を描くことが好きだという気持ちが伝わってくる。そして、絵を描く楽しさを思い出させてくれる。気になるモチーフをいかに描くかを追求すること。線を引くときの気持ちよさ、手に伝わる振動、リズム、音の心地よさを楽しむこと。どの色をどこに置こうかという駆け引きをしながら、ひとつの画面を仕上げていくこと。できた絵をじっと眺め、次に描く絵をイメージすること。菅原さんの絵には、人はなぜ絵を描くのか?という問いの答えが詰まっている。(瀬尾 夏美)
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審査員 ライラ・カセム賞
「黒獅子」 SHOTA
応募者のまなざし・コメント : 僕の住んでいる長井市には「黒獅子まつり」とういう神社の伝統神事があります。小さい頃から僕は黒獅子が大好きです。グルグルとはげしく動く力強い黒獅子をイメージして制作しました。動画は完成した獅子頭を持って休み時間に校内をねり歩いているところです。一緒に踊っていると、その黒獅子がひときわ輝いて見え、まるで生きているようです。どうぞ見て下さい。
審査員のまなざし・コメント : アートはプロデュースも大事。作品そのものだけでなくどう魅せるかもアート作品に必要な要素。作者の愛とこだわりで溢れる高精度のししまいと、それを受け取り仲間でストーリーと映像も含めた作品として仕上げたところに惹かれました。作品とその裏側にあるストーリーも作品の良さをさらに引き出し、まとまった作品に仕上がっていました。作品と魅せ方とストーリー性を兼ね揃えた渾身のプロデュース作品。これからの展開も楽しみです。(ライラ・カセム)
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審査員 halkenLLP賞
「無題」 松井 正行
応募者のまなざし・コメント : スタッフのところに来て、頭に手を置いて笑顔でエネルギーを注いでくれます。いつも物静かで穏やか。人のことが大好きで周りの方を癒してくれます。ぬり絵が大好きで、特に仮面ライダー大好き! お部屋では、毎日飲んでいるペットボトルのラベルを集めるのも大好き。いつもは、部屋のタンスに大事にしまっている宝物。今回、画用紙に貼っています。いつも熱心に、にこやかに取り組んでおられます。作品は、デイサポート天花の創作活動の時間で作成しております。
審査員のまなざし・コメント : 「集める」「貼る」という行為がむき出しの状態で立ち現れていて、なんとも気になる作品です。大量生産物のハンティング&コレクションという意味では、消費社会に対する批評性の高い表現となっているのではないでしょうか。(halkenLLP)
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入賞
「ぼくのハイウェイ旅行記~福島編」 熊谷 友佑
「いろんな花」 斎藤 ゆき
「桜の精」 阿部 勝康
「お花と緑の葉っぱ」 川村 佳祐
「アグネス・チャン」 荒木 恵二
「大きなくりの木 」 大沼 澄子
「強い思い 」 武田 康弘
「無題 」 山口 小夜子
「ぼくのすきなおと 」 箱山 洸朗
「坂道コロコロコースター 」 齋藤 琥
「宇宙の旅 」 平 祐哉
「魔術の書 」 らんぼ
「いろんな顔」 大場 稜也
「バス」 朝一 孝心
「好きな野菜」 松木 崇
「無題」 haru
「無題」 遠藤 綾
「万華鏡パート2」 瀬田 健治
「バスの運転手になったよ!」 長濱 哲哉
「無題」 今野 僚大
「無題」 石山 志津子
「無題」 工藤 ルミ
「無題あるいは、そして希望へ1」 和泉 覚士
審査員:
瀬尾夏美(アーティスト)
ライラ・カセム(デザイナー、東京大学先端科学技術研究センター、TURN プロジェクトデザイナー)
ハルケンLLP/アイハラケンジ(アートディレクター、東北芸術工科大学准教授)、三浦晴子(キュレーター、フォトグラファー)