きざしとまなざし公募展2025


きざしとまなざし賞
「さかなのながさ」 作家名:上野 流聖
写真(コマ送り風にまとめたもの)、トイレットペーパー、テープ、紙、ペン/2025年制作
●まなざしコメント ○どんなときにつくられた/行われた表現ですか? 水族館が大好きで、本を見て魚の大きさを職員に聞いてきた時、実際の長さが書いてあったので図ってみることにしました。
○この表現が持つ魅力や可能性、気づいたことを教えてください 好きなものを知りたいと思う気持ち、興味関心を楽しみに変えたことが、みんなでの活動に繋がりました。何で長さをはかる?と話をしていたら、あっ!と持ってきたものがなんと“トイレットペーパー” これで長さが図れると思ったのがすごいですよね!
○この表現にまつわる具体的なエピソードがあれば教えてください お友達や身近なもの(トイレットペーパー)を利用して、実際の長さを表現したのが魅力です。すごく盛り上がりました。作品にするには…?と考えていたら、本人がパラパラッと見はじめ…これだ!と思い、パラパラ漫画風にしてみました。本人も一緒に作成しました。見ると、つい笑ってしまいますよ!
(愛光園デイサービスセンター)
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●審査員のコメント 市販のメジャーとは比較にならない長さをもつトイレットペーパーに、物差しのポテンシャルをみいだすとは見事です。柔らかく白く繊細なこの素材が、実存する確かさをトレースするという、そのギャップに胸が踊ります。長さを測ってその数字を書き留めるのではなく、世界そのものを可変させ、丸めて手の内に収めてしまうというような表現に感激しました。 halken LLP/三浦晴子
「ジンベイザメ 18m」「オルネート・カウフィッシュ 20m」などと書かれた紙に丸められたトイレットペーパーが挟んであり、作品名は回文風の「さかなのながさ」。初めは理解できませんでしたが、添えられた写真アルバムや出品作品のコメントを見て、可笑しさがじわじわと湧いてきました。素材としてトイレットペーパーを選んだ点も面白いですが、その長さをスニーカーや友達と身体を一列にして実感しようとしている場面をパラパラ漫画のような写真で見られるようにしているのも効果的です。人間を圧倒する巨大で凶暴なサメも、今にもちぎれそうなトイレットペーパーでその長さが示されることで、生き物の別の側面が想像できるような気がします。上野さんの気持ちに寄り添い魅力的な表現が生まれている点で本賞にふさわしい作品だと思います。 岡部信幸
魚たちの長さが知りたい!という素朴かつ大事な問いから、じゃあどうやって測ろうかと工夫しているうちに、「なんだか楽しそうだ」「どうしたの」「協力するよ」と仲間が増えて、上野さんの問いがみんなの問いになる。あたらしいアイディアやかたちがどんどん生まれてく、その場のワクワク感が伝わってきて、わたしも楽しくなりました。ひとつの問いに、みんなで向き合う。そこには創造性と一体感が芽生えます。またこんな楽しい時間が生まれたら、ぜひ教えてほしいです。 瀬尾夏美
トイレットペーパーを丸め、魚の名前と大きさを書いた紙を貼り付けた作品。横には冊子が置かれ、図鑑を見て実寸を身近な素材で再現する様子が記録されていた。友人も巻き込んだユーモラスな実験であり、同時に科学的で表現的。写真が連なる冊子はコマ撮りアニメのようで、発想と遊び心が伝わった。 吉田勝信
一見しただけでは、トイレットペーパーを巻きなおした紙の塊にしか見えません。ただ、この作品、タイトル、そしてなぜこの作品が生まれたのかを知ると観ている我々まで楽しくなる時間が詰まっていることに気が付きます。流聖さんは本で大きな魚を見て、その大きさを知るためにトイレットペーパーを伸ばしてみたようと思いたったのです。これは単に数字をなんとなく理解するのではなく、身体を使い体験して理解しようとするとても良いアイディアです。例えば、ジンベイザメの大きさが10mと書いてあったとして、果たして我々はこの10mを実際の長さで体験しようとするでしょうか?私たちが普段の生活でわかったような気になっているものの多さに流聖さんの作品は気づかせてくれます。こんなふうに一つ一つ体験してみることは、驚きや喜びに繋がるのですね。最後に使った紙を紙を巻き直した作品と見えない発表のされ方ことも、ユーモラスです。そしてこのことを一緒にやってみようとそばにいる職員さんも素敵です。 永岡大輔
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山形県知事賞
「在来野菜」 作家名:小林遼平
コピー用紙、色鉛筆/2025年制作
●まなざしコメント ○どんなときにつくられた/行われた表現ですか? 自然に囲まれて地域で生活している中で、地元でしか栽培されていない“在来野菜”を作者に描いてもらったらどのような表現になるのだろうと思い、数枚の写真から選んでもらい描いてもらいました。
○この表現が持つ魅力や可能性、気づいたことを教えてください 今までの作品の描き方とは違い、明るいところと影のところを、メリハリのある配色と独特な描き方で仕上げていました。一枚一枚仕上がる度に驚きと感動の連続でした。
○この表現にまつわる具体的なエピソードがあれば教えてください 生活面で初めてのことにも臆することなくチャレンジする姿勢が見られていて、その意欲的なところがアート活動にも表れてきているのではないかと捉えています。
(スローワーク新町)
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●審査員のコメント イキイキとした描写、大胆ながら落ち着きのあるタッチに、新しい「きざし」を感じました。前年の応募作品である、自身がモチーフで登場する絵日記も素晴らしかったのですが、今回はテーマを「在来野菜」とすることで、内面の表現から一歩踏み出したような印象です。遼平さんの世界がどんどん広がっていくような期待感があり、そこ並走する方の「まなざし」に開拓者のような可能性を感じました。 halken LLP/三浦晴子
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審査員 永岡大輔賞
「今日の気分」 作家名:椎名 剛
ケント紙、カラーボールペン/2025年制作
●まなざしコメント ○どんなときにつくられた/行われた表現ですか? アートの時間に紙を用意すると、自分でペンを用意して描き始めます。
○この表現が持つ魅力や可能性、気づいたことを教えてください ジーっと見ていると剛さんの世界に吸い込まれそうになります。嫌なことも忘れさせてくれる色使いに癒されます。
○この表現にまつわる具体的なエピソードがあれば教えてください 休憩と言われるまで、ずーっと描き続けています。時々、首をふったり鼻歌を歌ったり楽しそうに、真剣な表情で一点集中して描いたり、いろいろな描き方をする剛さんです。
(らっふる)
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●審査員のコメント
線の密度に圧倒される剛さんの作品。一体どのくらいの時間、剛さんはこの1枚1枚と向き合っているのでしょう。数えきれないほど重ねられた色は、私たちがよく知るはずのボールペンの色を遥かにこえて、その濃く深い色彩には玉虫色のような輝きすら見えます。また複数の色を用いた作品の中には、上書きされた色彩から穴のように下層に描かれた線が見えるものがあります。これは、剛さんがただ線を重ねているのではなく、その積層で生まれる色彩や画面の変化を楽しんでいるからなのがよくわかります。また、昨年はお名前を何度も何度も1枚の紙に描くことから、このような線の積層の作品が生まれていました。今年はそれがよりシンプルに線を描くということで作られています。画面の上では似たように見えるかもしれませんが、より描くことにフォーカスされている点で大きな変化だと思います。今後の展開も非常に楽しみです。 永岡大輔



![作品の紹介|「ぎさしとまなざし公募展」より入賞・入選作品を紹介します。きざしとまなざし公募展とは、山形県出身または在住の社会において何らかの障がいのある方から公募した作品を、作品の背景を語るまなざしコメントと共に展示する公募展。また、表現のきざしとそれに寄り添うまなざしをテーマに審査を行い、きざしとまなざし賞、山形県知事賞、審査員賞、入選を選出している。審査員 : 瀬尾夏美さん(アーティスト) ・ ハルケンLLP(アイハラケンジさん[アートディレクター、デザイナー]+三浦晴子さん[キュレーター、フォトグラファー]) 岡部信幸さん(学芸員/山形美術館副館長)・吉田勝信さん(採集者・デザイナー・プリンター) ・ 永岡大輔さん(アーティスト)](/gallery/images/works_title.png)
